2023年3月12日日曜日

自転車のヘルメット着用努力義務化とその根拠等から現実の状況を見られるか?



 このエントリで書いたとおり、もうすぐそういう世界になります。
 一部メディア「義務化」とタイトルで大ウソをついているのはともかくとして、努力義務なので罰則とかは無いでしょう。そもそも以前から努力義務だった層はいた(高齢者はそうだった気がするが、若年が児童か幼児だったかは覚えていない)わけですし。

 自治体によっては購入補助が出るらしく、うちの市だとどうなのかなと思って調べてみるとまったく。というか三重県全体無いっぽそう。愛知だとちょろっと出てきましたが。さすが太平洋岸自転車道は伊良湖岬から鳥羽までフェリーを使えって言ってるだけのことはある(あ、それだと名古屋とかも同じか)。
 実店舗でヘルメットを購入しようとなると、安くても4~5000円の金が飛んでいきます。これって実のところ、バイクの安いヘルメットと変わらないどころかむしろバイクの方が安いまであります。車体に対する装備の費用割合としてどんなもんなのかと。「バイクのヘルメット50万円~です」とかだったらライダーはヘルメットを買うだろうかそれともバイクを降りるだろうか。
 まあ、構造体として最低限の機能を持たせるとすればそんな値段になるのか、というとどうなんでしょうね。2000円と20000円のヘルメットにどの程度の違いがあるかっていうと、規格をクリアすればあとはプラスいくらかって感じだろうから高いことに安全性は見いだせないな、個人的に。それは安全性に限ったことではないですけど。
 というか、頭部保護という意味では無帽と着帽の間にかなりの壁があるみたいなことをどこかで見た気がしますがどこだっただろうか(うろ覚えなので一応強調はやめておこう)。擦過傷に対する防御力はたしかにそこが分水嶺でしょうけど。

 で。
 検索して出てきたのはここ(もうめんどくせーんで所属自治体はどうでもいいや)なんですけど、見ていたら首がどんどん横に倒れていったのでここで吐き出し。
 ページ内に置いてあったのは2図。
 図1がこれで、
 図2がこれ。
 おそらく大元も公的なデータとは言え一応転載になるので、何かあれば元ページで。

 これ自体が国の施策の主根拠かはわからないですけど、この2表に誤字が一切ないものとしてこれからの話は続けます。
 と、その前に盤外的な小さな問題として。何が死亡に直結したのかわからないってことがあるでしょうかね。身体各所大動脈含む血管が通ってるので死につながることはあると思うんですけど、自転車特有のものかというと。数年前電アシ女子大生が歩行者を死なせた事故(事件)がありましたし。それはとりあえずいいか。自転車特有のものってほぼ無いし言っても仕方ない。

 問題0:年代が合致している。が。
 年代が合致しているので2図の時期的齟齬は考えなくてもいいでしょう。
 しかしこの表、単一年度ではなくてH29+H30+H31・R1+R2+R3の計5年間の表です。
 単純に20%にすることが正しいのか(コロナで自転車通勤が増えた時期がありましたし)という問題もありますし、そこを読み飛ばす人もそれなりにいるでしょうからなんかなあ、と。ある意味ではそこだけでこの表の根拠としての意義が無になりますよね。
 仕方ないですけどここは無視しましょうか。話が進みませんから。

 問題1:ヘルメットの着用状況と致死率が正しく照応していない
 図2が頭部損傷の表になっていないので、このパーセンテージは2145人中ってことですよね。つまり、頭部要因で致死していない人まで計算に入れていることになるのでは。
 というか、この表はパーセンテージじゃなくて実数で出すべきでしょうよ。表1と齟齬が出るからできなかったとか? どうかな。
 いや、齟齬は出るのかな。2145人中頭部損傷死者が1237人。表のとおりで単純計算で数値を出すと着用が2145*1/3=715非着用が2145*2/3=1430になりますし。「ヘルメットをかぶっていれば頭部損傷で死ななかった」というのがなんか違和感が出てしまう。
 加えて余談としてこの項で前置きとして書いておきますけど、ヘルメットしてても死んでいただろう人(※被害者がヘルメットをしていたかは不明)がいるということは忘れてはいけないというよりむしろ記憶のど真ん中に置いておくべきではないですかね。実際この表からでもヘルメットをかぶっているにも拘らず亡くなっている人がいるのはわかるのですが。頭部以外が要因であれば当然ですけど。

 問題2:致死率と事故の割合
 図2はなんの致死率なんだよというのがありますけど、元ページに致死傷者全体に対してのものとの記述がありました。
 致死傷者全体に占める致死者の割合が0.26+0.59=0.85。1パーセントも無い。まあそれでも1/100程度の確率ならやる意義はあるのかもしれないですが。
 それよりも、2.2倍ってところに目を向けさせてるのがいやらしいな、と。その数字の意味を計算すれば別のものが見えるんですけど、そこはやらないでしょうから。
 要はですよ。致死率=死亡者が全体の0.85%ってことは、99.15%の致傷者がいるってことですよね。2145/0.85*99.15=250,207.9411764706。250208人でいいんですかね(整数化しないのが気に入らないですが)。
 一応これはここでの数値として表面化している問題なだけで、非接触で事故にできるか微妙なものを自分もそれなりに経験しているので、事故件数や実際のそれとなればもっと増えるだろうと思いますが。その辺も勘案すれば事故全体の致死率なんて余裕で0.1パーセント切るんじゃないですかね。

 問題3:致死の原因はなんだよ
 やっぱりここが完全に目をそらされてるよな本当に。
 で思い出すのがこれ。
 取っておいてよかった魚拓。
 この状況下でヘルメットかぶっていようがかぶっていまいが関係ないだろうなあ。というか時期的にこれも含んでるのか。これが問題1で前置きしたことの本題。
 自爆が1割なので、果たしてそのうちのどれだけがヘルメット非着用での頭部損傷死因のものなのやら。それを0にできるなら意味あるんでしょうけどたぶん無理だわな。物理学的にも。って言っても仕方ないことしかないな。
 表や母数には自転車対自転車の事故も当然含むだろうとして、問題2で書いた通り致死傷者数=事故件数というわけではないんでしょうけど、これまた冒頭のエントリでも書いた通り自転車の事故は対車両8割(ただし表とは違う時期)ということを考えてもヘルメット云々はお守り程度にしかならなさそうな。単純な転倒で対地面との衝撃はある程度なんとかなるとしても、大型車両に轢かれたらどうにもならないでしょうよ。
 直上の物理学の話で言うと、防弾チョッキの意味とか知らない人ばっかりなんだろうな、とかね。

 問題4:ていうか全体的に数値の大小が極端すぎる
 統計期間は5年(長すぎ)。
 死者数は2145人(判断できず。後述)。
 ヘルメット着用状況別の致死率が0.26%と0.59%(少なすぎ)。
 交通事故死者数については、検索すると同年総計がそれぞれ、
 H29:3,694
 H30:3,532
 R01:3,215
 R02:2,839
 R03:2,636
 だそうで。1/7.415384615384615。約13.5%です。死者数が1日当たり1を超えているのは多いのかもしれませんが。
 ここからは単純計算ですが、
 致死傷者数は2145/0.85*100=252,352.9411764706
 致傷者数は2145/0.85*99.15=250,207.9411764706(前述)
 ヘルメット着用の死者は252,352.9411764706*0.0026=656.1176470588236
 ヘルメット非着用の死者は252,352.9411764706*0.0059=1,488.882352941177
 やはり整数にならないのが気に入らないのと比率が比率なのと例によってスプレッドシートの扱いが雑であんまりうまくグラフ化できませんでしたけど、

 こんな感じですかね。マジで致死者が少なくて下のグラフだと赤部分から凡例が生えて来ませんでした。
 ヘルメット着用率の数値が出てれば積み上げ棒グラフ二本でどうにかなった……こともないか。縦軸が。


 こうやっていろいろ書きましたけど、それでヘルメットの努力義務化を否定する気はありません。今のところ肯定する気もさっぱりありませんが。
 なんにせよ、出したい情報だけ出して錯覚で強調して結論に持っていくのはどうなんだ。
 この根拠で言うと、自動車なんてもっと被害死者出してるから禁止にしよう」って議論の方が先に来そうなものだけど。それはまあ、「自転車が人を殺してるから禁止にしろ」って騒いでるやつらも一緒だけどっていうか照応してるよなあこの二件。
 当該動画でも「ヘルメットの着用より自転車の違反の取り締まりを~」ってコメントがけっこうあったけど、車は?

 少なくとも行政は、以前書いたとおり何か変わったかちゃんと今年度と来年度で比較してくださいよ。
 これで自転車降りる人もそれなりにいそうだけど(自分は保険強制化で数か月使用しなかった経歴があるので)。乗り始める人とどっちが多いやら。

 あとね。

「自転車は車の仲間!」ってそれは車に言ってくれ
加えて、車と軽車両と自転車の区分およびその法規の把握はみんなちゃんとしようね。

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